望遠鏡の場合と、探査機の場合、2つに分けて考えてみることにしましょう。
望遠鏡の場合
望遠鏡で見分けることができる2つの物体の最小の角距離を「分解能」といいます。分解能は対物鏡の口径と観測波長だけで決まり、対物鏡の口径に反比例します。ただし地上の可視光望遠鏡では、大気の影響によって像が広がるため、1秒を下回る角分解能を実現することは困難です。
※1秒は1度の3600分の1です。
口径6センチメートル | 1.93秒角(約4キロメートル) |
口径50センチメートル | 1.5秒角(約3キロメートル) |
口径1メートル | 1秒角(約2キロメートル) |
口径105センチメートル [シュミット望遠鏡(木曽観測所)] | 0.75秒角(約1.4キロメートル) |
口径8.2メートル [すばる望遠鏡] | 0.2秒角〜0.3秒角(約400メートル) |
地球軌道にあるハッブル宇宙望遠鏡は大気の影響を受けないので、0.05秒角(月面を見る場合は90メートル)までの分解能があります。1999年4月に、このハッブル宇宙望遠鏡を使って月が観測されました。
このときはコペルニクスクレーター付近を分解能約180メートルで、さらに拡大画像では約90メートル程度でとらえています。
参考
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探査機の場合
では、探査機ではどのくらいの分解能の画像が得られているのでしょうか。
探査機では、高度が低ければ低いほど月の表面は細かくみることができます。
1963年のソ連のルナ3号による月の裏側撮影以来、さまざまな探査機による月画像が得られてきました。
これまでに数多くの探査機により、月表面の写真が撮影されてきました。
○ルナーオービター (アメリカ)
ルナーオービター1号〜5号は、1966年8月から1967年8月にかけて3ヶ月毎に打ち上げられました。
1号〜3号では、月の赤道のあたりにあるアポロの着陸候補地点を10〜20メートルの分解能で撮影しました。4号は近月点高度2700キロメートルの極軌道に投入され、月の表側全体を60〜100メートルの分解能で撮影し、近月点高度100〜200キロメートルの極軌道に入った5号は、表側の一部を10〜40メートルで、裏側も150〜300メートルの分解能で撮影しました。
ルナーオービターが撮影した画像の分解能
1号〜3号 | 10〜20メートル | 赤道付近 |
4号 | 60〜100メートル | 月の表側全体 |
5号 | 10〜40メートル | 表側の一部 |
150〜300メートル | 月の裏側 |
○アポロ月周回船 (アメリカ)
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アポロ15・16・17号では月周回船に、精密な地図を作るための「メトリックカメラ」と、高分解能のステレオ写真をとるための「パノラミックカメラ」が搭載されていました。3機は赤道付近の上空高度約110キロメートルをほぼ円軌道で周回し、メトリックカメラでは分解能10〜20メートル、パノラミックカメラでは探査機の真下での分解能が2メートルという写真が得られました。
○クレメンタイン (アメリカ)
1994年1月に打ち上げられたクレメンタインは、月の全表面を撮影した最初の探査機となりました。
クレメンタインは、高度400〜2940キロメートル、周期5時間の軌道で71日間観測を行いました。その間に撮った画像はなんと約100万枚です。クレメンタインが搭載していた4つのカメラの分解能はそれぞれ以下の通りです。
クレメンタインのカメラの分解能
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カメラの種類 | 近月点(425キロメートル) | 極上空(1275キロメートル) |
---|---|---|
UVVIS(紫外・可視光) | 115メートル | 306メートル |
NIR(近赤外) | 178メートル | 475メートル |
HIRES(高分解能) | 30メートル | 90メートル |
LWIR(長波長赤外線) | 65メートル | 195メートル |
○スマート1 (ヨーロッパ)
2003年にヨーロッパ宇宙機関が打ち上げた月探査機、スマート1には、高精度月小型カメラ(AMIE)と呼ばれるカメラが搭載されていました。このカメラの解像度は平均約80メートル、近月点付近では30メートルにも達し、クレメンタインよりも詳細な画像を得ることができました。
○かぐや (日本)
「かぐや」は、合計で3種類の科学カメラと、ハイビジョンカメラを搭載していました。科学カメラは、地形を主に撮影する地形カメラ、分光装置を使って鉱物の組成などを調べるマルチバンドイメージャ、そして線状に分光データを取得するスペクトルプロファイラの3種類です。
地形データを得るためのカメラとしては地形カメラおよびマルチバンドイメージャが主に使われました。地形カメラの解像度は最良のときで約8メートル、マルチバンドイメージャは20メートルと、これまでの探査機に比べても格段に高い解像度を実現しました。
○嫦娥 (中国)
「かぐや」と同時期、2007年に打ち上げられた中国の月探査機「嫦娥1号」は、周回高度が200キロメートルと高かったこともあり、カメラの解像度はおよそ120メートルほどであるといわれています。なお、2010年に打ち上げ予定の「嫦娥2号」では、軌道高度が100キロとなり、またカメラも改良されることから、数メートル、場合によっては1メートルという解像度になると推測されています。
○チャンドラヤーン1 (インド)
2008年にインドが打ち上げた月探査機、チャンドラヤーンは、地形マッピングステレオカメラ、及び月面鉱物マッピング装置という、2つのカメラ関連装置を搭載していました。地形マッピングステレオカメラの解像度は約5メートル、月面鉱物マッピング装置は約70メートルの解像度でデータを取得しました。なお、月面鉱物マッピング装置は、アメリカが開発したものです。
○ルナー・リコネサンス・オービター (アメリカ)
この探査機は、その名が「月面偵察機」となることからもわかるように、月面を高精度で撮影することを狙っています。探査機のカメラは、最高で1メートルという、これまでにない解像度を誇ります。ただこの解像度では月面全体を撮影することはできず、そのためには解像度100メートルの広角カメラが使われます。
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