変調と復調について
変調と復調について、人の声を送る場合の例で考えてみます。
何キロも先にいる人に対して話をする場合いくら大声でしゃべっても内容(情報)は相手に届きません。この場合考えられる伝達媒体は電波、ワイヤー、光などが考えられますが、声そのものは音波で空気の振動ですからそれ自体を送る訳にはいきません。この場合、音声をマイクロフォンで電気信号に変え送ることになりますが、この電気信号は音声の強弱に比例した連続的(アナログ的)な電圧の変化です。電波やワイヤーを使ってこの信号を伝送する方法には、
1、このままアナログ量として伝送する
2、この信号を数値化(デジタル化)してデジタル量として伝送する
の2通りがあります。
FMラジオやAMラジオは1の方法で送り、携帯電話やBSデジタル放送では2の方法がとられています。受信側では受けた信号がデジタルの場合はアナログ量の電圧に変換され、その強弱に基づきスピーカを鳴らしています。
ここで電波でデータを送る場合を考えて見ましょう。
アナログやデジタルの情報信号(これをベースバンドデータと呼びます)は、そのままでは電波として空間に飛び出してはくれません。電波として空間に飛び出すくらい高い周波数の搬送波(キャリア)にベースバンドデータを乗せる必要がありますが、このように元の情報を含む電気信号を伝送路(この場合は電波)に適した信号に変換する事を変調と言います。従い変調方式には、アナログ変調とデジタル変調があることになります。
●アナログ変調方式
AM、FM、PMなどがあります。アナログ的にキャリアを変調します。
●デジタル変調方式
もともと数値のデータの場合はどのようにするのでしょうか?これはデジタル量(信号)として送る以外に方法は無さそうです。デジタル変調は無線機の高周波パラメータをベースバンドデータ(デジタル量)で直接偏移させます。
デジタル変調にはFSK、MSK、CPFSK、GMSK、GFSK、ASK、PSK、DBPSK、DQPSK、QPSK、BPSK、多値QAM、OFDM、CCKなど沢山の方式があります。
周波数偏移変調について
周波数偏移変調には次のような方式などがあり、これらは全て仲間です。
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FSK(Frequency Shift Keying) | 周波数偏移変調 |
CPFSK(Continuous Phase Frequency Shift keying) | 位相連続周波数偏移変調 |
MSK(Minimum Shift Keying) | 最小偏移変調 |
GMSK(Gaussian filtered MSK) | ガウシアンフィルターMSK |
FSK方式は搬送波の周波数を、デジタル符号であるベースバンドデータの論理に比例して変化させる変調方式で、搬送波周波数を論理1の時と論理0の時で切り替えますが、変調波の位相が連続している方式とそうでない方式があります。この内、位相が連続している方式をCPFSK方式と言い、FSK方式では一般的にこちらが使用されています。また、CPFSK方式で周波数利用効率を高めるために変調指数mを0.5にして周波数帯域を狭くしたものをMSK方式と呼びます。MSK方式よりもさらに狭帯域にしたものにGMSK方式があります。
CPFSK方式はベースバンドデータの論理値に応じた周波数を発生させるためにVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)を使います。VCOは回路に加えるベースバンドのデジタルデータ電圧のレベルに応じて発振周波数� �変化するので位相が連続しています。
FSKの内、2つの発振器を使った物は位相が連続せず、周波数帯域が広くなってしまうのであまり使われません。
FSK方式(CPFSK)自体は回路方式が簡単ですが、PSK方式などと比べて、使用する周波数帯域幅(占有周波数帯域幅)が広くなってしまうので、幾らかでも少なくするためにCPFSK方式の特性を落とさず帯域を狭くしたMSK方式やGMSK方式も使われます。FSK方式の占有周波数帯域幅(スペクトラムの拡がりの範囲)はベースバンドデータの周波数スペクトラムと変調の深さを表わす変調指数で決まります。
変調指数をm、周波数偏移をΔf(片側)、データの1ビット時間長をTとすると
m=2×Δf×T = 2×Δf/ビットレート で表され Δf = m×ビットレート/2 となります。
※ビットレート = 1/T 単位:bps(bit per second)
ビットレートが同じ場合、変調指数が大きいと占有帯域幅が拡がるのが分かります。FSKでは変調指数が大きいほど受信機の復調においてSN(信号対雑音比)が高くなりますが、占有帯域幅が拡がり周波数利用効率が悪くなります。MSK方式はCPFSK方式で変調指数を0.5としたものです。
さらに、GMSK方式ではVCOに加えるベースバンドデータに対してガウシアン・フィルタでフィルタリングし、占有周波数帯域幅を狭くしています。
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※2値FSK
無線機器や無線モジュールの仕様書には2値FSKと書かれている場合がありますが、データの論理に対して2つの周波数を割り当てる一般的なFSK(MSK、CPFSKなど)を指すもので1変調で1ビットを伝送します。4値FSKは1変調で2ビットを伝送するのでビットレートは倍になります。
※直接FSK
アナログ変調方式と区別してデジタル変調を強調するときにこのように表すことがあります。
◇ FSK変調
※bit0~bit3は入力したデジタルデータを表します。
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◇ CPFSK変調
※bit0~bit3は入力したデジタルデータを表します。
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◇MSK変調
※bit0~bit3は入力したデジタルデータを表します。
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位相偏移変調について
位相偏移変調方式には次のような方式などがあり、全て仲間です。
PSK(Phase Shift Keying) | 位相偏移変調 |
BPSK(Binary Phase Shift Keying) | 二相位相偏移変調 |
QPSK(Quadrature Phase Shift Keying) | 四相位相偏移変調方式 |
DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying) | 差動二相位相偏移変調方式 |
DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying) | 差動四相位相偏移変調方式 |
PSK変調方式はベースバンドデジタルデータの符号に比例してキャリア(搬送波)の位相を変化させる変調方式です。電力や周波数の利用効率がASKやFSKに比べ優れており、データのエラー率が小さいのが特長です。また、多値変調がし易くFSKと比較して占有周波数帯域幅が狭くて済むので実際のアプリケーションで多く使われています。しかし処理回路が複雑になったり、伝送路における振幅特性がリニアでないと占有周波数帯域幅が増加したり、位相特性がリニアでないとデータエラーが発生するので技術的にクリアしなければならない事項があります。これはPSK方式の仲間の全てに当てはまる事柄です。
構造的な支持をどのように処理するか
PSK変調方式には差動位相変調方式(DBPSK、DQPSK)と絶対位相変調方式(BPSK、QPSK)があり、通常は復調の信頼性が高い差動位相変調方式が使われます。差動位相変調方式の内DBPSK方式は先行しているキャリアの位相に対してデータが1ならば位相を変化(180°反転)させ、0ならば何もしません。
DQPSK方式はキャリアの位相変化を90度おきにとり、送られてくるデータストリームの2ビット毎のブロックに対して各位相を割り当て、先行しているキャリアの位相に対して位相変化をさせます。
DQPSK方式はDBPSK方式と同じ占有帯域幅でも倍の情報を送ることが出来る(ビットレートが倍になる)ので実際に好んで使用されます。
振幅偏移変調について
ASK(Amplitude Shift Keying) 振幅偏移変調 | ベースバンドデータに比例してキャリア(搬送波)の振幅を変化させます。 ノイズや干渉に弱いので遠距離のデータ伝送にはあまり使われませんが、方式が簡単で小型にでき、コストが安いので微弱無線局などの近距離通信で使用されてます。データが1の時も0の時も発振回路は止まらないのでOOKと区別します。 |
OOK(ON-OFF Keying) | ASKと同じで一定周波数、一定振幅の連続したキャリアをON、OFFさせますが、OFFの時は発振回路が完全に止まります。このため低消費電力の無線機器が実現できます。 |
波について
◇ 波の加算と乗算
ミキサーと云う言葉が良く使用されていますが、オーディオ回路のミキサーと無線回路でのミキサーでは出力結果に大きな違いがあります。二つの信号のミキシングを行うとすると、オーディオ回路のミキサーでは入力信号に対するレベル的な合成(加算)を行っているのに対し、無線回路でのミキサーは周波数的な加減算(乗算)を行います。オーディオ回路のミキサーでは入力信号の周波数が変化する訳ではありませんが、無線回路のミキサーでは周波数変換が行われます。
◇ 波の加算
赤線が二つの正弦波を加算した場合の波形です。この加算ではレベル的加算が行われます。オーディオミキサー等がこれに相当します。
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◇ 波の乗算
中央の赤線が正弦波f1とf2をミキサーで乗算した結果です。この乗算の結果、f1+f2とf1-f2の信号が発生するのでバンドパスフィルターで回路上必要な方の信号を取り出します。無線機ではアップコンバージョンで和成分、ダウンコンバージョンで差成分を取り出しています。ミキサーの乗算をハードウェア的に見ると、半導体を非直線部分で動作させることにより発生する高調波を利用しています。
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◇ 位相差を持った波の加算
赤線が計算結果です。電波が物体に当たって反射してきた場合、直接波との間に位相差が発生し、合成信号レベルが強めあったり弱めあったりします。空間でのマルチパスによるフェージングや、アンテナ内部で起こる反射現象がこれに相当します。
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◇ 位相差を持った波の乗算
赤線が位相差を持った同一周波数同士をミキサーで乗算した結果の和成分です。周波数逓倍器に利用されています。
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CPFSKの周波数変換
次のアプレットはCPFSK波形のアップコンバージョンの様子です。f1が搬送波、f2がベースバンド信号をVCOに入力して発生させたCPFSK信号です。中央の赤線がf1とf2を乗算した結果ですが、この波形にはf1+f2とf1-f2やその他の高調波成分が含まれています。(例えば弊社MU-1の被変調波(f2)の周波数は搬送波周波数の1/20(400MHz帯)~1/60(1200MHz帯)です)。この乗算の結果、f1+f2とf1-f2の信号が発生するので送信機ではf1+f2の信号をバンドパスフィルターで取り出します。受信機では同じようにミキサーを使ってダウンコンバージョンを行い、差の信号を取り出します。
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波を分解すると
どんな形の波形でも周波数とレベルが異なった複数の正弦波から成り立っている事を聞いた事があるでしょう。このアプレットでは位相およびレベルが違う5個の正弦波を加算する事ができ、その事を実感する事ができます。
方形波、三角波、鋸波のボタンを押すと、高調波の位相およびレベルがセットされそれぞれの波形になります。スタート位相が同じ奇数次の高調波を合成すると赤線の様に方形波ができます。基本波と高調波の関係を確かめて下さい。
性能が悪いフィルター回路を信号が通過すると、信号を構成する高調波成分に位相遅れが発生し出力波形が変化してしまいます。方形波や鋸波の上部が波打っていますが、さらに11次、13次などの成分を合成すればより実波形に近づきます。
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